「磨く」

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 2週間後、私はまた、いつものバスに乗っていた。今日は彼が死んだときに来ていたあの黄色のスカートを履いた。少しずつ外が暑くなってきて、汗ばむようになってきた。彼は元気にしているだろうか。天国は涼しいだろうか。今日も彼に対する心配が募る。でもこの心配も、誰かを愛おしく思う故の結晶だと思えば、何にも辛くない。  窓から入り込む隙間風で、手に持っていた花がかすかに揺れた。今日は花を多めに持ってきた。ちょうど墓2つが埋まるくらいの量だ。  彼の墓に水をかけて、今日も丁寧に磨く。彼の幽霊姿に会ってみたいと思っているが、未だに会えていない。彼の存在を私に伝えてくれるのは、この墓だけだ。この場所で、私は彼との再会を願っている。いや、私だけじゃない。今日もどこかで、彼との再会を願う人がいる。だからいつ、誰と再会してもいいように、私はこの墓を彼の代わりに磨いている。  線香をあげて手を合わせたら、私は残りの花と水を持って反対方向へと進んだ。そこにあった墓は2週間前に比べたら若干汚れているものの、まだ輝きを放っている。 「お、また会いましたな」  近藤はその墓の一番高いところに座っていた。髪型が、前会った時よりも綺麗に整っていた。服装もなんだか、前よりさっぱりしている。 「……いいじゃん。見慣れないけど、似合ってる」 「本当に緊張したんですぞ!? この勇気を褒めていただきたい」 「はいはい。ほら、掃除するから、どいて」  私は彼の墓と同じくらい、近藤の墓を丁寧に掃除した。 「いいもんですな。新しい自分は」  近藤は私の後ろで重たそうな体を悠々と動かし宙を舞っていた。最愛の誰かを待つ近藤の顔は、なんだか誇らしかった。
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