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「今日もお墓参りですか。いいですねぇ、彼氏さんは幸せ者ですな」
「今日もついてくるんですか、えっと、その……」
「近藤です。近藤守。そろそろ覚えてもいいのでは?」
自らを近藤と名乗るこの男。彼が初めて私の前に現れた時は、それはそれはびっくりした。しかし、この一度見たら忘れられない見た目と死んだとは思えない独特な話し方が相まって、恐怖を感じることは欠片もなかった。彼はその後も、私がここにやってくる度必ずと言ってよいほど顔を出し、私の墓参りを後ろから見ている。
「お、今日はずいぶんとすてきなワンピースを着ていらっしゃる。春ですなぁ」
「……彼がくれたの。誕生日に」
私が着ていたのは、彼が去年の誕生日に買ってくれた白い花柄のワンピースだった。風が吹くと、まるで花が咲くかのように裾が舞うのが美しい。このワンピースに袖を通す度、「来年着てるところ見せてね」と無邪気に笑っていた彼のことを思い出す。彼の言葉通り、今日は彼にこのワンピースを見せに来た。でも、それを見て喜んでいる彼の姿には、私が想像することでしかもう、会うことは出来ない。
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