「磨く」

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 彼の墓は霊園の細い道を進んだ一番奥にある。平日の昼間から墓参りをする人はやはり少ないのか、人は私しかいなかった。 「本当、ここは寂しい場所ですぞ」 「いつもこんな静かでしたっけ」 「まぁお盆になると少しは賑わうんでしょうけど、いつもこんなもんですな。みんな墓を建てるだけ建てて来てやらないんです。周りを見てみてください」  近藤に言われるがまま周りを見渡す。どこを見ても、植木は綺麗に整理されていて、道にはごみ1つない。きっと管理者が毎日丁寧に清掃しているのだろう。しかし、1つ1つの墓まで見渡すと、その様子はまた違って見えてくる。花が枯れたままの墓、蜘蛛の巣がかかった墓、湯飲みの中に1滴の水もない墓……最後に人が足を踏み入れたのはいつなのだろうという墓がいくつもあった。 「墓の管理はご遺族に任せているんだそうです。管理人は干渉できないんですわ」 「こんな一等地なのに」 「プライドかなんかじゃないですかねぇ。こんないいところに墓があったらそりゃ死んだ人も喜ぶと思ったんでしょう」 「なんか、全部忘れられてるみたい」 「まさにそうだと思いますよ。ダメですよねぇ。終わった後も大事にしなきゃ。僕も生前は放送終了したアニメを誰よりも大事に覚えていようと心がけていたものですわ」 「……何でもかんでもアニメに例えて」 「……僕があなたについていくのは、あなたの彼氏さんの墓がこの土地でどの墓よりもきれいだからなんですよ」    
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