その1 はん長はおんみょうじ!?

2/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「朝子ちゃん、宿題はできてるの?」 「今やってるところ」  この日の宿題は朝子ちゃんの苦手(にがて)な理科のレポートだった。基本的に、朝子ちゃんは勉強が得意だけど、理科と体育だけは本当に苦手なのだ。この日の宿題は「なぜ物を燃やすのにさん素が必要なのか」だった。でも、朝子ちゃんにはお兄ちゃんがいる。お兄ちゃんは、おおかみ中学校の2年生で、朝子ちゃんの苦手な勉強をよく教えている。 「えーっと……『どうして物を燃やすのにさん素が必要か』か。そうだ、朝子ちゃんはスチールウールを知ってるかな?」 「スチールウール? なにそれ?」 「その前に、スチール缶は知っているかな?」 「あの、ジュースの缶に書いてある『アルミ』とか『スチール』とか、そういうマークのこと?」 「そうそう。これはリサイクルのマークという意味もあるけど、缶がどういう材料でてきているかというのも示しているんだ」 「うんうん」 「それで、スチールは英語(えいご)(てつ)という意味だ。こいつは空気中のさん素と結びつくことによって色が赤くなる。つまり、金属(きんぞく)現象(げんしょう)のことを指すんだ。現象には必ず理由(りゆう)がある。つまり、物を燃やすのにはさん素が必要になるんだ。(ぼく)の話で分かったかな?」 「なるほど。鉄が燃えるのにはさん素が必要なのか。だから、理科の授業でスチールウールが赤く燃えていたのね」 「そうだ。ああ、僕はこれからサッカーの練習(れんしゅう)があるから、家の番はたのんだぞ」 「分かってるよ」  お兄ちゃんを見送って、朝子ちゃんはスマートフォンに入っていたメッセージを見た。どうやら、あやちゃんからのメッセージだったようだ。 【朝子ちゃんは『カッパ』を知ってるかな? あの、緑色(みどりいろ)の体で頭にお皿を乗せたお化け。こういうのは朝子ちゃんに聞いたほうが早いかなって思って。それでね、最近(さいきん)学校の裏山の川でカッパが目撃されているって聞いたの。朝子ちゃん、カッパの謎を調査(ちょうさ)してほしいな あや】  朝子ちゃんは、そのメッセージにきちんと返事を返した。 【カッパ? もちろん知っているわよ。それで、どうしてカッパの調査をわたしに任せようと思ったの? あさこ】 【うーん、なんていうか、こういうのは『おんみょうじ』? に任せたほうがいいってお母さんが言ってたから あや】 【仕方(しかた)ないなぁ……。ちょっと、学校の裏山で待っててくれる? すぐ向かうから あさこ】
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!