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「朝子ちゃん、宿題はできてるの?」
「今やってるところ」
この日の宿題は朝子ちゃんの苦手な理科のレポートだった。基本的に、朝子ちゃんは勉強が得意だけど、理科と体育だけは本当に苦手なのだ。この日の宿題は「なぜ物を燃やすのにさん素が必要なのか」だった。でも、朝子ちゃんにはお兄ちゃんがいる。お兄ちゃんは、おおかみ中学校の2年生で、朝子ちゃんの苦手な勉強をよく教えている。
「えーっと……『どうして物を燃やすのにさん素が必要か』か。そうだ、朝子ちゃんはスチールウールを知ってるかな?」
「スチールウール? なにそれ?」
「その前に、スチール缶は知っているかな?」
「あの、ジュースの缶に書いてある『アルミ』とか『スチール』とか、そういうマークのこと?」
「そうそう。これはリサイクルのマークという意味もあるけど、缶がどういう材料でてきているかというのも示しているんだ」
「うんうん」
「それで、スチールは英語で鉄という意味だ。こいつは空気中のさん素と結びつくことによって色が赤くなる。つまり、金属がさびる現象のことを指すんだ。現象には必ず理由がある。つまり、物を燃やすのにはさん素が必要になるんだ。僕の話で分かったかな?」
「なるほど。鉄が燃えるのにはさん素が必要なのか。だから、理科の授業でスチールウールが赤く燃えていたのね」
「そうだ。ああ、僕はこれからサッカーの練習があるから、家の番はたのんだぞ」
「分かってるよ」
お兄ちゃんを見送って、朝子ちゃんはスマートフォンに入っていたメッセージを見た。どうやら、あやちゃんからのメッセージだったようだ。
【朝子ちゃんは『カッパ』を知ってるかな? あの、緑色の体で頭にお皿を乗せたお化け。こういうのは朝子ちゃんに聞いたほうが早いかなって思って。それでね、最近学校の裏山の川でカッパが目撃されているって聞いたの。朝子ちゃん、カッパの謎を調査してほしいな あや】
朝子ちゃんは、そのメッセージにきちんと返事を返した。
【カッパ? もちろん知っているわよ。それで、どうしてカッパの調査をわたしに任せようと思ったの? あさこ】
【うーん、なんていうか、こういうのは『おんみょうじ』? に任せたほうがいいってお母さんが言ってたから あや】
【仕方ないなぁ……。ちょっと、学校の裏山で待っててくれる? すぐ向かうから あさこ】
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