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納骨を終えて、蒼子は山の中腹にある田舎の家に帰ってきた。お茶を飲みながら、懐かしい顔ぶれとおしゃべりをした。
そこにいたのは、蒼子とその妹、妹の旦那と子供たち、家主である叔父と叔母、蒼子にとっては従兄妹に当たる、叔父の息子夫婦と娘がひとり。
話題にあがったのはその娘(娘と言っても五十近いのだが)が近頃痩せた、というはなしだった。蒼子も久しぶりに会ってびっくりしたのだ。町子姉ちゃん、綺麗になったって。
町子姉ちゃんはちょっと前に病気をして、入院していたらしいのだ。たいした病気ではない、と聞かされた。
叔母もこんなことを言っていたくらいだ。
「最近、みどり屋の町子が痩せて綺麗になったと評判だて。」
みどり屋は叔父と叔母が営む小売の酒屋で、町子姉ちゃんはそこの看板娘なのだった。
それから女が集まって、ダイエット談義になった。町子姉ちゃんは、病気でちょっと痩せたはいいが、それをキープする自信がなく、よいダイエット法はないかと皆に訊いたのだ。
「食べたものを、その都度ノートに書きだすといいよ。」
と蒼子が言うと、町子姉ちゃんは首を振る。
「そんなめんどくさいことできない。」
町子姉ちゃんは誰がなにを言ってもめんどくさいと言って、結局よいダイエット法は見つからずに終わった。
蒼子は、それでもいいじゃない、と思っていた。町子姉ちゃんは目がくりくりっと大きくて、年を取っても可愛らしい。のんびりと穏やかで明るい性格も、とても好ましい。みんなが大好きな町子姉ちゃん。
だからそれでいいと思ったのだ。
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