仏の眷属(けんぞく)

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 やがて楽しい時間も終わり、蒼子の妹夫婦と子供たちは近くの旅館に引き上げていったし、従兄夫婦は次の日仕事があるとかで帰って行った。  叔父の家には、叔父と叔母、町子姉ちゃんと蒼子だけが残された。  かつては大勢の親戚が夏に集まる拠点の地だった。ふるさとと言えばここだった。叔父のたくさんの兄弟たちも、ひとり亡くなり、またひとり。最後まで田舎に帰り続けた父も亡くなり、なんだか寂しくなってしまった。  明るすぎる蛍光灯の下で、蒼子たちは食事を取った。新鮮なお刺身と、叔母が作った茶色い煮物がいくつか、揚げ物もあって、どれもとても美味しかった。 「しかし正守が先にいくとはね。あれは末っ子だったすけ、油断してたな。兄弟みんないっちまう。」  叔父が寂し気に言う。  七人いた兄弟も、いま残っているのは、施設にいる幸恵ばあちゃんと叔父だけになったのだという。そうか、もうそんなに死んだか、と蒼子は思う。
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