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電話を切ったあと、蒼子はしばらく考えていた。町子姉ちゃんが死ぬかもしれない。
目を閉じたとき、脳裏にちらついたのは、あの綺麗な虫のことだった。
蒼子は虫を殺さなかった。仏の眷属かもしれないと思ったからだ。どうして町子姉ちゃんにその話をしなかったのだろう。町子姉ちゃんだって、そのことを知っていれば。
いや、わからない。話したところで、どのみち同じだったのかもしれない。しれないけれど、けれどでも……!
蒼子は後悔した。自分は道を間違えたと思った。
もしくは、あるいは。蒼子は道を間違えず、町子姉ちゃんは道を間違えたのかもしれなかった。ほんとうのことは、蒼子にもわからない。
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