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あれは父の四十九日の法要のときだったから、よく覚えている。
四ノ宮蒼子は四年ぶりに新潟の田舎に帰省した。帰省と言っても蒼子の実家は関東で、新潟の田舎は父が盆暮れ正月を必ず過ごす、生まれ育った懐かしい場所なのだった。
つい先ほど、山の上の墓に、父の骨を埋葬してきた。心筋梗塞で倒れた父は、亡くなる直前まで健康体だったから、骨が丈夫で分厚く、妹とふたりでぎゅうぎゅうに押し込めるようにして、なんとか入れられたのだった。
その様子が滑稽で、蒼子は自分でも笑い出しそうになるのをぐっとこらえた。先ほど寺で涙をぬぐっていた妹に、見咎められてはかなわない。
墓の前に立つと、日本海が見渡せる。初夏の風が心地よく、海は凪いで陽光に照らされ、優しく煌めいている。
二十年前に母の骨もその墓に納骨した。父はこの墓に入ることが悲願であったのだろう、愛する妻とともに、海を眺めていたかったことだろうと想像する。
蒼子はその墓には入らないと決めたが、それでもその墓が最高のロケーションにあるというのは認める。死んだら、高見からゆったりと海を眺めていたいと思うのは、人情ではないだろうか。
天国も地獄も輪廻転生もないとするなら。ほんとうのことは、蒼子にもわからない。
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