とおりゃんせ

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 わたしはいわゆる歴女だ。  と、いうとホンモノの歴女さんに怒られそうだけど。  歴史全般とか、この時代がとか、この事件がとかが好きなわけじゃなくて、新選組の沖田総司が好きなんだ。  そう、幕末が好きとか、新選組が好きというより、沖田総司個人が大好き。  あ、普段は沖田さんって呼んでます。  きっかけは、ある小説だ。  新選組副長土方歳三が主人公の小説で、幕末当時でも現代でも多くの老若男女を虜にする主人公はぐうの音も出ないくらいステキだけど、わたしは沖田さんに惹かれた。  それからは沖田さんのことが少しでも書かれてる小説、資料を学校や市の図書館で読み漁り、映画やドラマや特集された歴史番組やアニメをお父さんが契約してるサブスクで見漁り、沖田さんをモチーフに描かれる漫画やゲームなども網羅した。  そして、漫画やアニメのファンもよくやる、聖地巡礼の旅に出たくなったんだ。  まずは家族旅行がてら、福島県会津を巡った。  ここを説明すると長くなるのでごく簡単にいうと、新選組を預かっていたのは会津藩主で、かの地には新選組に関連する史跡もたくさん残る、新選組第二の故郷といえる場所なんだ。  そして京都。まだまだニワカなわたしは修学旅行の時は新選組のことも沖田さんのこともよく知らなかったから史跡巡りはできてなくて、家族旅行でもう一度連れて行ってもらった。  言わずと知れた新選組の本拠地を存分に堪能した。  さぁ次は、沖田さんが最期の時を過ごした場所に行きたい。  沖田さんは当時不治といわれた病に罹り、隊務を離れて療養生活を送ることになった。  その最期の地は石碑が立つ今戸神社付近ではなく、植木屋平五郎宅離れで、現代でいう千駄ケ谷付近だ。  さすがに家から近過ぎるのとそれ以上に、その場所は『伝 沖田総司逝去の地』という案内板があるだけで観光地でもなく、家族旅行で行ける場所じゃない。  そう、案内板があるだけだ、と知ってるけど、行きたい。  しかも、実際の場所は案内板と少し離れている。それも知ってるけど行きたいんだ。  新選組の資料本には史跡巡り用に住所や地図が載ってるものもたくさんある。  地図が苦手なんて言ってられない。眼を皿のようにして熟読した。  祝日だけどお父さんもお母さんも仕事だし、友達に付き合ってもらうのも気が引ける、というか絶対ドン引きされるし。  ひとりで、行ってみよう。
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