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ちなみにというか、重大なことだと思うけど、わたしはスマホなんて持ってない。
もう持ってる友達も多いけど、うちのお父さんもお母さんもまだ早いとか言って買ってくれないから、スマホでマップを見るとかナビ機能? とかは使えない。
紙っきれの地図に頼るしかない。
住所は新宿区大京町で、JRの最寄駅は千駄ケ谷。資料によるとそこから徒歩6分らしい。
千駄ケ谷駅を出るところまでなんとかできた。というか駅員さんに聞きながらやっと着いた。
超絶方向音痴には、ここからが本番だ。
ぶっちゃけ、地図を見ても全然わかんない。
というか、この地図で行ける人いる?
さっきから地図とかいってるけど、わたしが持ってるのは資料本にほんのちょっと載ってる簡略化された地図だ。しかも大きさとしては、赤ちゃんの握りこぶしくらい。
普通は行く前にちゃんとした地図を買うのかな、というかスマホ使うのか。
なんて、今更ながら思いながら無謀にも歩き始める。
まだ午前11時。時間ならたっぷりある。迷うとはいっても徒歩6分の場所だ。19時の門限には余裕で間に合う。
目の前には東京体育館があって、もうすぐバレーボールの大会があるとの垂れ幕が掛かっている。
地図を頼りに、全く自信はないけど左手側に進んで行く。あ、方角もよくわかんないから東とか西とかは言えない。
ニュースとかでたまに聞く、閑静な住宅街という雰囲気の道を歩いて行く。
頼みの地図は、見ても全然わかんない。それでも歩き続けた。
大きな通りに出て、車がバンバン走る道が目の前にある。
その向こうだった。散々写真で見た、目印のビルが見えたのは。
「……えっ、つ、着いた……?」
自分でビックリしてしまう。
現地に着いて改めて、わたしが持ってる地図は本格的な史跡巡りには向かない、ごく簡単に書かれたものだと気付いたから、ろくに地図も見ないでただ直感の赴くままに歩いていただけだった。
嘘みたいだけど、間違いない。ビルの色もかかってる看板も合ってるし、絶対にここだ。
嬉しさと不思議さが混ざったような気持ちながら、わたしの頬は緩む。
近くまで歩いて、いや走って行く。
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