とおりゃんせ

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 ちゃんと着けるのかなぁ。  ものすごく不安。でも、それでも行ってみたいという気持ちの方が強い。  お母さんに言われてやっと自覚したんだけど、絶望的な方向音痴だ。  道を覚えようとする気がないでしょ、と言われてしまうくらい。  こんなヒドイことを言われたのは家族で旅行に行った時。  お父さんは月曜日から土曜日まで、朝から晩まで仕事をしているから、きっとすごく忙しいのだと思う。  それでもゴールデンウィークとかの連休になると、少し遠くにある有名な遊園地や動物園でたくさん遊んだ後に温泉に入っておいしいご飯を食べて泊まる、というような家族旅行へ連れて行ってくれる。  まだまだワンパクという表現が似合う小五の弟と中二のわたしは毎回大喜びで出かけるのだけど、旅行中、お父さんが運転してくれる車の中でも、遊園地で次はジェットコースターに乗ろうと歩く時でも、動物園で推しのキリンを探す時でも、いつも家族と話したり買ってもらった食べ歩き用のお菓子とかに夢中で全然道や景色を見ていない、ということをお母さんに指摘されて、確かに、と納得してしまった。  確かに、そのせいか、お手洗いやお土産品の物色でふと少しだけ別行動をとる場合、何時にここに集合だよと言われても、その時間をかなり過ぎても半泣きになりながら待ち合わせ場所を探し回ってお父さんかお母さんにやっと見つけてもらう、ということが何度もあった。  これに懲りたお母さんに、方向音痴なんだから別行動禁止、と言われてしまったんだ。  お母さんに言われる前に気付くべきだったんだけどね。  そういえばこの前の修学旅行で京都へ行った時、仲良しグループ6人での自由行動で、自分達で行きたい場所を選んで電車やバスの乗り換えを調べて、目的地まで歩くんだけど、企画中は大張り切りだったのに、現地に着いたら丸っきり友達頼みだった。  まず、地図が読めない。地図を見ながら自分が今いる場所や方角はもちろん、今来た道とこれから行く道が全然わかんなくて、ひたすらにくるくると地図を回しながらウーンとうなってばかりだった。  そんな、周りの人もやっと自分も認める方向音痴なわたしが、これからひとりである場所へ向かおうとしている。
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