第4章 自覚すると、生々しくて

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「か、柿崎、さんのこと……」  ゆっくりと、自分の気持ちを口にしようとした。けれど、タイミングの悪いことに部屋の扉がノックされる。  一瞬で、意識を引き戻された。 「あ、いま、行きます……!」  だから、愛美は扉のほうに早足で向かう。拓海のことは、この際放っておいても構わないだろう。 (タイミング、悪すぎる……!)  心の中で悪態をつきながらも、やってきた客人をもてなす。客人は柿崎ホールディングスの専務であり、拓海に用事がありここを訪れたらしかった。  拓海を呼べば、彼は真剣な面持ちで部屋に戻ってくる。それから、専務と真面目な話に取り掛かる。  もうこうなれば、愛美の出る幕はない。 (お茶の準備、しよう)  秘書として、いろいろとやることはたくさんあるのだ。とりあえず、まずは専務をもてなそう。  そう思って、愛美は意識を仕事モードに切り替える。……とはいっても、上手くいったような気は、しないのだが。
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