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そうすれば、エレベーターの扉が開く。階を示すディスプレイは、二十八階と示していた。
「行こうか」
「……うん」
由宇花と共に、二十八階のエレベーターホールに足をつける。すると、一人の女性が出迎えてくれた。
彼女は由宇花の顔を見ると、にっこりと笑い、由宇花にいくつかの質問をしたのち、歩き出す。由宇花がそれについていくので、愛美も恐る恐るついていった。
「どうぞ、こちらでございます」
女性がそう声を発し、やたらと豪奢な部屋の扉を開く。そのため、愛美は息を飲み、顔を上げた。
(……わぁ)
そこにあったのは、一言で表せばとても煌びやかな広間だった。天井からつるされたシャンデリアはきらきらときらめいている。部屋の中には軽食や飲み物も並べられており、いくつかの談笑用のスペースもある。
中には品のいい男女が三十名ほどおり、各々話に花を咲かせていた。
(なんていうか、別世界みたい……)
頬が引きつるのがわかる。
けれど、由宇花はそんな愛美を肘で小突いた。どうやら、入ろうと言いたいらしい。
(……行かなくちゃ)
それに、いつまでも入り口で立ち往生していれば怪しまれる。
そう思うからこそ、愛美は一歩を踏み出し広間の中へと足を踏み入れる。
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