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すると、広間の空気に一瞬で飲み込まれてしまいそうになった。
が、そこをぐっとこらえて周囲を見渡す。男性たちはきっちりとした高級そうなスーツを着こなしており、女性たちは各々パーティー用のドレスを身に着けている。
女性たちの身に着けるアクセサリーは、一級品なのだろう。遠目から見ても、その大ぶりの宝石は目を引く。
(……私、やっぱり場違いだよね?)
いくら社長令嬢とはいえ、こんなところに来れるほどの人間ではないと、愛美は自分では思っている。
榊グループは確かに多数の大企業をまとめるグループ会社だ。けれど、さすがにこういうところでは見劣りしてしまうだろう。
(いいえ、今日の私はただの一般人。榊グループの令嬢としてここに参加しているわけではないわ)
自分自身にそう言い聞かせていれば、愛美の後ろにいた由宇花が愛美を通り抜けて広間に入っていく。
……どうやら、彼女は彼女で婚活に勤しむらしい。
愛美はここに出逢いを求めに来たわけではない。だから、端の方で大人しくしておこう。そう、思った。
「……ふぅ」
広間の端にはテーブルと椅子が設置してあるスペースがあった。なので、そこに一人で腰掛ける。
さすがはお見合いパーティーというべきか、テーブルと椅子は二人用のよう。だが、愛美にはそれでもよかった。
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