第1章 始まりの出逢い

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 二人で広間を抜け出し、エレベーターホールへと向かう。  その間も、愛美はドキドキし続けていた。ちらりと拓海の顔を見上げれば、彼は真剣な面持ちで前を向いている。  ……無意識のうちに、ごくりと息を飲んでしまう。 (って、だからこんなにもじろじろと見たら不審者じゃない……)  ゆるゆると首を横に振って、愛美は拓海に連れられてエレベーターに乗り込んだ。  拓海が指で二十六階のボタンを押す。すると、エレベーターの扉が閉まって動き始めた。 「愛美さん。……どう、しました?」  愛美の様子を見てか、拓海が不思議そうにそう声をかけてくる。  ……異性慣れしていないと、白状してしまおうか。  心の中でそんな感情が芽生え、愛美は意を決して拓海の顔を見つめた。 (こんなにも素敵な人なのだもの……女性慣れしていらっしゃるわよね)  もしもそうだとすれば、愛美は期待外れかもしれない。愛美は割と美人の部類に入ることもあり、社会人になってからは異性慣れしていると思われることが多かった。特に、初対面だとそう思われやすい。 「え、えぇえっと、あの……」  しどろもどろになりながら言葉を発しようとすれば、エレベーターが止まり、扉が開く。  ディスプレイは二十六階だと表わしていた。 「……行きましょうか」  何とタイミングが悪いのだろうか。そう思いつつ、愛美はまた歩き出す。  『シルヴィ』は高層階になるほど部屋がいいものになっている。拓海が泊まる予定だった部屋は、どうやらスイートルームらしい。
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