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柿崎ホールディングス。
そこは、主に不動産業で利益を出してきた大企業である。
現在の社長である柿崎 圭一はとても有能であり、今もなお業績は右肩上がり。
そんな圭一には二人の娘と一人の息子がいる。上二人の娘はすでに他家に嫁いでおり、残った息子は現在アメリカで経営学を学んでいるという話だ。
そんな柿崎ホールディングスで圭一付きの秘書をしている榊 愛美は、この日秘書室で困惑の表情を浮かべていた。
「お願い! 本当に今日だけでいいの!」
「……でも」
愛美はその少し吊り上がった形をした目に、困ったような色を宿す。
目の前には同僚であり、良き友人である三井 由宇花が必死に頭を下げている。
こうなったのは、幾分か前。なんでも、由宇花が知り合いと共に行うという合コンで、欠員が出てしまったらしい。
「今回はハイスペックな人ばっかりだからさぁ……。どうしても、欠員を出すわけにはいかないのよ……!」
由宇花はつい数ヶ月前に恋人と別れ、絶賛彼氏募集中の二十四歳だ。そのため、今回の合コンにかける意気込みは違うのだろう。
……けれど、そこに愛美を巻き込むのは勘弁願いたい。
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