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「だけど、私男の人苦手だし……」
その言葉に嘘も偽りもない。実際、愛美は二十四歳を迎えても男性との交際経験がない。それはひとえに男性が苦手だから。
幼い頃に近所の男の子に散々いじめられ、男性嫌いをこじらしてしまっていた。
「それは、よく知っているけれど……」
由宇花が眉を下げる。
その表情が何処となく悲しそうに見えてしまい、愛美は「ふぅ」と息を吐いた。
(けど、合コンでしょ……?)
それすなわち、家への帰りが遅くなるということだ。……過保護な両親や兄が、なんというか。
そんな想像をして、ぶんぶんと首を横に振る。
……想像するだけで、恐ろしい。
(かといって、由宇花をこのままにしておくわけにも……)
由宇花曰く、合コンは今日の夜だと言う。もしも、愛美が断って、ほかの女性社員が捕まらなかったら……どうするのか。
そこまで考えて、愛美は腹をくくることにした。
「……わかった。でも、私、会話とか参加しないよ? ただ、そこで飲んだり食べたりしているだけだよ?」
「ありがとう! それでいい! 全然いい!」
一応両親や兄には、女友達と飲んでくると言おう。あの三人は愛美が同性と遊ぶことに関しては、何も口を挟まない。ただ、異性とかかわると烈火のごとく豹変するだけであって。
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