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(まぁ、私、これでも一応社長令嬢だし……。そうなるのも、仕方がないのかも?)
そう、愛美は実は社長令嬢である。榊グループという、アパレル関連の会社をまとめている一家の娘なのだ。
そんな愛美がこの柿崎ホールディングスで働いている理由は、一種の社会勉強である。
父に「人の上に立つ者として、一度働いてみるかい?」と提案され、それを呑んだ形だ。ちなみに、兄も数年前まで一般企業に勤めていた。今は父の跡を継ぐために、榊グループで勉強に励んでいるが。
「場所は?」
「あぁ、そこは問題ないよ。タクシーで行くし!」
「……えぇ」
合コンと言えば、居酒屋とかレストランが主だろう。……知識しかないし、実際に合コンに参加したことはないが。
「じゃあ、終業後に待ってて。ほかの面々と一緒に迎えに来るからね!」
「……うん」
そこで会話を打ち切ると、休憩時間の終わりを知らせるアラームが鳴った。……さて、仕事に戻ろうか。
(合コンはあんまり気が乗らないけれど、お仕事はちゃんとしなくちゃね)
ここで働き始めて、愛美は初めて人がどういう風に働くのかを知った。大学生の頃にグループ会社に顔を出す機会が何度かあったものの、彼らは一様に愛美を迎えるためにこぎれいにしていたのだ。それを、愛美は今更ながらに理解した。やはり、父に提案された通り働いてみてよかったと思う。
(あ、そう言えば、相手がハイスペックだっていうことだけれど、どういう職業の人か聞いてないなぁ……)
でもまぁ、どうせ自分は飲んで食べているだけだから、関係ないか。
心の中でそう思いなおし、愛美は午後の会議で使う資料をまとめ始めたのだった。
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