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◇
その後、終業時間を迎えた愛美は、着替えを終え由宇花を待っていた。
しかし、何となく落ち着かず、もぞもぞとしてしまう。
(合コンなんて、初めてだものね……)
愛美は女子高出身であり、大学こそ共学だったものの、異性とかかわる頻度は決して多くはなかった。
というのも、愛美は異性を警戒するあまり、とっつきにくいと思われていたのだ。それを知ったのは、大学時代の友人がこっそりと教えてくれたから。
けれど、愛美はそれでよかった。男性とかかわると、否応なしに幼少期の嫌な思い出がよみがえってくる。それに、男性と仲良くしなくても不便はない。
自分はどうせ社長令嬢。お見合いをして、家のメリットになる男性と結婚するのだろうから。
そんなことを考えていると、目の前で手が振られる。驚いてハッとすれば、由宇花が立っていた。彼女の側にはほかに二人の女性がおり、どうやら彼女たちが今日の合コンの参加者らしい。
「それにしても、ごめんねぇ。無理強いしちゃって」
由宇花が申し訳なさそうにそう言う。そのため、愛美はゆるゆると首を横に振った。
どうせ、合コンでは役に立たないのだ。ただ美味しいものを食べて、飲んで。それで帰ってくるつもりなのだ。
「ううん、いいわ。……それで、何処に行けばいいの?」
「とりあえず、タクシー捕まえようか」
愛美の問いかけを軽く躱し、由宇花が会社のビルを出ていく。
ちょっと怪訝に思いつつも、愛美は由宇花と二人の女性社員の後に続いた。
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