第1章 始まりの出逢い

5/30
前へ
/114ページ
次へ
 ◇  その後、終業時間を迎えた愛美は、着替えを終え由宇花を待っていた。  しかし、何となく落ち着かず、もぞもぞとしてしまう。 (合コンなんて、初めてだものね……)  愛美は女子高出身であり、大学こそ共学だったものの、異性とかかわる頻度は決して多くはなかった。  というのも、愛美は異性を警戒するあまり、とっつきにくいと思われていたのだ。それを知ったのは、大学時代の友人がこっそりと教えてくれたから。  けれど、愛美はそれでよかった。男性とかかわると、否応なしに幼少期の嫌な思い出がよみがえってくる。それに、男性と仲良くしなくても不便はない。  自分はどうせ社長令嬢。お見合いをして、家のメリットになる男性と結婚するのだろうから。  そんなことを考えていると、目の前で手が振られる。驚いてハッとすれば、由宇花が立っていた。彼女の側にはほかに二人の女性がおり、どうやら彼女たちが今日の合コンの参加者らしい。 「それにしても、ごめんねぇ。無理強いしちゃって」  由宇花が申し訳なさそうにそう言う。そのため、愛美はゆるゆると首を横に振った。  どうせ、合コンでは役に立たないのだ。ただ美味しいものを食べて、飲んで。それで帰ってくるつもりなのだ。 「ううん、いいわ。……それで、何処に行けばいいの?」 「とりあえず、タクシー捕まえようか」  愛美の問いかけを軽く躱し、由宇花が会社のビルを出ていく。  ちょっと怪訝に思いつつも、愛美は由宇花と二人の女性社員の後に続いた。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2825人が本棚に入れています
本棚に追加