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「ねぇ、今日のって……」
「えぇ、いいところの御曹司とかいらっしゃるらしいわよ!」
前を歩く二人の女性社員の話を聞きつつ、愛美は疑問を持つ。御曹司が合コンになど参加するのだろうか? もしかしたら、これも社会勉強の一種なのかも――と思った。けれど。
(そもそも、合コンって社会勉強になるの……?)
そう思ったら、どう頑張っても答えなんて出てこない。結局、愛美は考えることを止め、由宇花に促されるがままに彼女が捕まえたタクシーに乗り込む。
女性社員の一人が助手席に乗り込み、残りの三人で後部座席に乗り込んだ。
「『シルヴィ』までお願いします」
由宇花が何でもない風にそう言う。タクシーの運転手も何の疑問もなく車を走らせ始めた。……が、ただ一人。愛美だけが狼狽える。
(え? 『シルヴィ』って、かの有名な高級ホテルじゃあ……)
何となく、嫌な予感がする。それに、先ほどの女性社員の会話。……もしかして、これって合コンじゃないんじゃあ――。
「ね、ねぇ、由宇花。……これ、本当に合コン……?」
隣に座る由宇花に恐る恐るそう問いかける。すると、彼女は舌を出した。
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