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「ごめんごめん、騙しちゃった。今日行くのは、いわば上流階級の婚活パーティーよ」
「……え」
「いやぁ、偶然知り合いに紹介してもらってさぁ。代わりに三人連れてきてって、言われたのよ」
……頭の中が真っ白になっていく。
合コンならまだしも、婚活パーティーだなんて……。
(それって、飲んで食べてするだけじゃダメじゃない……?)
婚活パーティーということは、そこに参加する人たちは結婚相手を求めているのだ。結婚願望も今のところなければ、恋人も欲しくない愛美なんて場違いも甚だしい。
「ちょ、降りる。ごめん、私、やっぱりそんなところいけない」
「大丈夫だって。そんな悪いところじゃないし」
「そういう問題じゃないの……!」
それに、由宇花は言った。先ほど、上流階級と。
すなわち、最悪の場合――愛美の正体を知っている人がいるかもしれないのだ。
(せっかく一般社員として雇ってもらっているのに、社長令嬢だなんてバレたら、厄介なこと間違いないわ)
そう思って必死に由宇花を説得しようとするものの、結局「大丈夫だって」という言葉に押されてしまう。
その結果、愛美は満足な抵抗をすることも出来ず、ホテル『シルヴィ』にやってきてしまった。
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