第1章 始まりの出逢い

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(そういえば、『シルヴィ』には来たことがなかったわね……)  社長令嬢とは言え、愛美はあまり贅沢をしない主義である。両親や兄は愛美をこれでもかというほど甘やかそうとするものの、それを日々断ってきた。それは、父方の祖母のような凛とした女性になりたかったから。凛とした女性になるためには、甘やかされるばかりではダメだ。  何故か愛美は小さな頃からそう思ってきたのだ。そのためか、あまり贅沢を好まない社長令嬢になってしまった。 「実はさぁ、私、こういうところに来るの初めてなのよ」  ふと由宇花が肩をすくめながらそう言う。なので、愛美も頷いた。……高級ホテルに行くことはあったが『シルヴィ』には来たことがない。だから、完全な嘘ではない。そう、自分自身に言い聞かせた。 「だから、なんていうか新鮮。愛美は、来たことある?」 「……う、ううん、ない。こういう場所、初めて」 「そうだよねぇ。一般人には縁遠いよねぇ」  ころころと笑いながら由宇花がそういうので、愛美は心の中で謝った。  だが、どうしても社長令嬢とバレるわけにはいかないのだ。そう思い、愛美はぎゅっと手を握る。
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