路地裏ヴァンパイアハンター

3/6
前へ
/6ページ
次へ
「あの……大丈夫ですか?」 うずくまっていたのは、線の細い男性だった。 アンドレアの声かけに、彼は顔を上げる。 蒼白い顔色、血のように赤い瞳。 「案ずるな。……お前の血を飲めば、すぐに治る」 開いた口には、鋭く尖った犬歯。 その姿はまるで、映画に出てくるヴァンパイア。 「……え!?」 このままでは噛みつかれるとわかっているのに、身体が動かない。 スガァン!! 銃声が響き渡り、眉間を撃ち抜かれた男性は、勢いよく後方に吹っ飛ぶ。 撃ったのは、黒づくめの男だった。 「これ持って後ろに下がってろ」 黒のロングコートの下に、神父服。 無造作に投げて寄越したのは、チェーンがついた銀の十字架。 大きくて頼もしい背中。 正体はよくわからないけど、あたしを庇うように立ってくれてる。 十字架を握りしめたアンドレアは、素直に男の指示に従う。 その時、突如建物がぐにゃりと歪み、真っ直ぐな道が現れた。 石畳で出来たその道は、陰鬱な雰囲気の古城に続いている。 一体、何が起きているのか。 事態が呑み込めないアンドレアは、さらに信じられない光景を目にすることになる。 「……まったく。折角の獲物だったのに」 撃たれたはずの男性が、むくりと立ち上がったのだ。 右手でさすった眉間の傷は、きれいにふさがっている。 「貴様……“教会”から派遣されたハンターだな?」 「……ハンター?」 「最近多発してる行方不明事件、ヴァンパイアの仕業だって言ったら、おじょーちゃんは信じるかい?」 つまり、この人、ヴァンパイアハンターってこと? とても信じられない。 そうだ。あたしは悪い夢を見てるんだ。 アンドレアは震える手で、思いきり自分の頬をつねる。 ……痛いし、目も覚めてくれない。 つまり、今、起きてることは、全て現実ってことだ。 「こんなの……信じるしかないじゃん」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加