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ハンターと呼ばれた男は、古城を指差し、ヴァンパイアに問う。
「あそこが、あんた達の根城かい?」
「正直に答えると思うか?」
「まあ、答えるわけないわな」
ヴァンパイアがパチン、と指を鳴らす。
「おいで、可愛い下僕たち」
すると、道の両脇から、無数の棺桶が現れた。
中から蓋を開け、出てきたのはヴァンパイアの餌食になった人間たち。
生気のない蒼白な顔、真っ赤な瞳をした彼らは、ゾンビのようによろよろと、こちらに向かって歩いてくる。
アンドレアは、下僕の集団の中に、見慣れた顔を見つけた。
自分と同じ、ブルネットの長い髪。
首から下げている金色のロケット。
変わり果てた姿だが、間違いない。
「……姉さん!」
背後から発された悲鳴のような叫び声に、全てを察したハンターは、ヴァンパイアを睨み付ける。
「……下衆が」
罵りの言葉を無視したヴァンパイアは、ただ優雅に微笑む。
「次の合図で、彼らは君たちに襲いかかる。君、仮にも神父だろう?あわれな人間たちを殺せるかい?」
「それはあたしの姉さんじゃない!」
声を上げたのは、アンドレアだった。
姉さんだけじゃない。
餌食になった人たちみんな、死してなお、ヴァンパイアの意のままに操られるなんて、そんなの悲しすぎる。
「お願い……みんなの魂を救ってあげて」
涙を流しながら発した言葉に、ハンターはこくりと頷く。
「おじょーちゃん。……目ぇつぶって、耳、ふさいでな」
十字架を首にかけたアンドレアは、両の手のひらで耳をふさぐ。
目はつぶらなかった。
全てを見届けないと、後悔する気がしたから。
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