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路地裏ヴァンパイアハンター
ここは、繁華街のはずれにあるバー。
男くさい空間の中、すいすい泳ぐように動き回るウエイトレスがいた。
「ビールのジョッキふたっつ、お待ちどうさま!」
ポニーテールに結んだブルネットの髪。
くりっとした、アーモンド色の瞳。
小さめサイズのTシャツの下、ちらりと覗く、引き締まったお腹。
ジーンズ地のホットパンツが引き立てる、すらりとした脚。
常連客のひとりが、彼女に声をかける。
「よお、アンディ!今日もいい脚してんな」
「まあね。それほどでもあるけど」
この手のからかいは、しれっと受け流すのが正解。
大体は、酔って気が大きくなってるだけだったりするし。
「最近、行方不明事件が多発してるだろ?イイ女なんだから、帰り道には気を付けなよ」
こっそりチップを弾んでくれた彼に、アンドレアはにっこり笑いかける。
「わかった、ありがと」
「アンディ、これ、2番テーブルに持っていってくれ」
「はーい」
グラスをお盆に乗せて、アンドレアは2番テーブルに向かう。
「お待たせしました!」
でかくてゴツくて、服は黒づくめ。
無愛想な顔に不精ひげ。
「ブラッディ・マリー、ウォッカ抜き……って、これほぼトマトジュースじゃないですか」
思わず口から飛び出した疑問に、男はにこりともせず答える。
「この店のウエイトレスは、客の飲み物にケチつける決まりでもあるのか?」
「いえ、そういうワケでは……」
こんな風体で、下戸のくせにバーに来てるって、このオヤジ、怪しすぎない?
「失礼しました。……ごゆっくり」
心の中で呟きながら、アンドレアはその場を立ち去った。
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