それは仕事の帰り道での話

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 私は、もう生きるのがしんどくなっていた。  かといって、別に死ぬつもりはなかった。  ただ、そんな台詞を言ってみたかっただけ。  ……ただ、それだけ。  毎日が忙しいから、ちょっとそう思ってみちゃうことがあるだけだ。 「はぁ」  空に向かって大きなため息を私は吐き出す。  どうせあんな糸くずなんて、雀が元気に飛んだら簡単に解けてしまうだろうし、何よりあの子は数分後にもう死ぬだろう。もう会えないとわかっていたから私はきっとあのセリフを投げたのだろう。死ぬ気がないから、こそ。  なのに。  次の、夕方。  仕事帰りに、また、私は公園の傍を歩いていた。  垣根の傍で倒れていたな、となんとなく視線を忙しなく走らせていたら、私が赤い実をちぎった細い木が目に入った。実が何もついていない枝がぽつんとあり、その他はまばらだったりぎっしりだったりと必ず実をつけているのを見止めた私は、私がむしった場所は人工的に実が取られたのが丸わかりでちょっと顔をしかめた。  とはいえあの時周りに誰もいなかったしバレちゃいないだろうと思い、(なん)にも知らない他人の振りをしながら視線を下げた。 「あー……、た」  口の中で言葉を転がすように呟いた。  私がばらまいた赤い実が、不自然に垣根の足下に点々と転がっていた。  けど、目当ての雀はいなかった。  猫にでも食われたか。  それとも心優しい人に拾われたか。  残酷な結果と優しい結果という両方がパッと脳裏に浮かんだ私だったけれど、そこにいないのならばもう私には関係のないことだと頭を振った。 「別に、死ぬわけじゃないし」  それは私に対してか  雀に対してか
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