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目の前、後ろ、左右、総てに壁がある…いや、壁じゃない。存在しているのは襖や障子、つまりは、空けようと思えば開けられる、出ようと思えば出られる品だ。
だけどそれらに囲まれたこの空間から、俺はまったく出る気がない。
壁よりも遥かに薄い襖と障子。その隔たりの向こうに何かがいたらすぐさま判る。
何かがいるが、どうやらこの、襖と障子で覆われた中には入れないらしい。けれど外の総てが、確実にこちらを窺っている。どうにか中に入ろうと画策している。
四方から感じるその空気。それを遮りたくて、俺は、部屋の中央に座り込み、両手で耳をふさぎながら目を閉じた。
俺に構うな俺を意識するな俺なんていないものと思ってろ。
効き目は多分ないだろうけれど、そう願いながら、俺は、数多の『何か』の気配が渦巻く、四方を囲む障子と襖を見据えた。
四方…完
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