一線を超えた後は一緒に歩こう

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一線を超えた後は一緒に歩こう

 一人のギャル女子高生があった。名前は千代森美香代(ちよもり みかよ)、彼女は普段からロクに勉強もせずに、遊びとファーストフード店のアルバイトに明け暮れる毎日を送っていた。明日のことを一切考えずに今日を楽しむことをモットーにして生きてきたのである。  そんな美香代に変化が訪れたのは高校3年生の5月の大型連休期間が終わった時のことであった。遊びに遊び倒した大型連休期間が終わり、5月病が発症したのか陰鬱としながらホームルームを受けていると、担任教師が教壇の前に立ち皆に報告を行った。 「唐突なんだが、今日から一ヶ月ウチのクラスで教育実習生を引き受けることになった!教育実習Ⅰという教育実習生が受ける事前準備カリキュラムがあって、その対象にうちの高校が選ばれたんでなー。おーい! 入ってきてくれー」  教室に眉目秀麗の爽やかな好青年が入ってきた。その姿を見た女子達が思わずに「キャー」と黄色い悲鳴を上げる程のビジュアルを持つ程のものである。 その教育実習生は黒板に「新井岳登(あらい がくと)」と綺麗なチョーク字で書いた後、皆に自己紹介を行った。 「えー、おはようございます。私は城南大学教育学部三年の新井岳登と申します。担当教科は国語の古典です。担当する部活は演劇部です。私もこの高校を卒業しているので、OBと言うことになりますね。当時は皆さんと同じで担任の山田先生にはとてもお世話になりました。私は教師になるのがかねてからの夢で、今日は皆さんに会えてとても嬉しく思います。古典の面白さや古き良き日本について少しでも皆さんに教えられたらと思います。それでは一ヶ月よろしくお願いします」 と、言った一晩かけて覚えてきたような教育実習生のテンプレートの自己紹介を岳登は行った。  生徒達は万雷の拍手を送り岳登を歓迎した。それから、担任の山田先生より今回の教育実習に関する補足が入った。 「本来、新井先生のような教育実習生は受験で忙しい三年生を担当することはありませんが『進路相談』を教育実習生の間から体験させることで、将来教師になった時に三年生を担当することになった時に活かしてほしいと思いまして、このような教育実習カリキュラムとなりました。皆さんの成績ですが、新井先生は把握しているので何でも相談して下さい」  教師だけど教師じゃないヤツに進路指導任せるのかよ…… これじゃあ俺達は新人育成のモルモットじゃないか。一部の生徒は不満を覚えた。 だが、大半の生徒は「こういうものか」と納得するのであった。
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