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そして迎えた4月、美香代は桜舞う城南大学のキャンパス内を歩いていた。岳登を探すためである。
屋上庭園のベンチに岳登は座っていた。久々に見る想い人の姿を前に美香代の胸は激しく高鳴り興奮する。そして、軽い足取りで岳登の前に向かうのであった。
岳登は春の陽光に身を預け、ウツラウツラと船を漕いでいた。目の前に人が来る足音に気が付き「ハッ」としながら、慌てて飛び起きるのであった。
「また会えたね。先生?」と、美香代は声をかけた。しかし、岳登は目の前にいる女性が誰かを思い出せずにいた。
「あの、どちら様でしょうか?」
からかっているのだろうか。可愛いところがあるじゃないか。美香代はニッコリと春の陽光に負けないぐらいの笑顔を見せた。
「あたしですよ、千代森美香代ですよ。ほら、先生に教育実習でお世話になった」
あれから約一年、岳登は美香代のことはすっかり忘却の彼方へと消え去っているのであった。格好もギャルから清楚なものに変わっているために余計に気が付かない。
「と、言われてもなぁ…… もしかしてナンパ? 悪いんだけど他当たってくれない?」
「先生? 覚えてないんですか? 千代森です!」
「マジで覚えてないんだけど、勘弁してくれない?」
すると、遠くから女性が岳登を呼ぶ声が聞こえてきた。格好は割と派手でメイクの濃い大学生ギャルである。
「あ、ガックーン!」
岳登はその女性の元へと駆けていった。そして、手を絡め合うように繋ぐのであった。
美香代は「何? この盛りのついた泥棒猫みたいな女は……?」と、言いたげな目で二人を見つめてしまう。
岳登であるが、眉目秀麗な好青年。放っておいても女性の方から寄ってくるレベルの男性なのである。高校在学時にはファンクラブも出来る程であった。ただ、本人はそれを知らずに勉強の毎日で女性を相手にすることはなかった。
城南大学に入学した後は勉強の日々から開放され、チャラチャラとしたキャンパスライフを過ごす毎日。女性関係に関しては自由奔放に生きるギャルばかりと付き合い「これじゃあギャル版源氏物語だよ」と本人も自嘲するぐらいに奔放であった。
勉強という枷が外れた反動が女性との付き合いと言う形で表れたとしか言いようがない。
岳登が教育学部を選んだ理由であるが、両親が教師であり「岳登は教師になるのよ」と子供の頃から言われており、進んだだけのこと。
美香代の高校での教育実習も教員試験に必要な「二単位」のためだけで、それ以上でもそれ以下でもなかった。ただ、美香代に抱いた好意だけは本物。たまたま、受け持ったクラスに自分の好みの女の子がいて好意を抱いていると知ったから、受け入れただけのことであった。
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