ため息と流し目

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 ◆◆◆  大和くんは実験と自然観察が大好き。たくさんの実験結果を見せてくれたし、私と一緒に実験や観察をすることもあって、とても楽しかった。  一緒に育てたツタンカーメンのえんどう豆は、大和くんのお姉さんに豆ごはんにしてもらった。薄い赤紫が綺麗なごはん、とってもおいしかったな。お母さんも絶賛して、レシピを教えてもらったお礼に、クリスマスプティングの作り方を教え返していたっけ。  大和くんが一人で行った実験の成果を、私にプレゼントしてくれることもあった。柊の葉で作った葉脈のしおり、ピンホールカメラで撮った写真、墨流しというマーブリングと似た技法で模様を写し取った綺麗な紙。どれも大切に宝箱にしまっている。  中でもとりわけ印象に残っているものは、硫酸銅の結晶だ。  今ではずいぶんよくなったけれど、私は喘息持ち。日本に来た年は、慣れていなかったのもあったのだろう。喘鳴(ぜんめい)のある中発作(ちゅうほっさ)がなかなか治まらなくて、一週間ほど入院した。幸い夏休みに入ってすぐだったから、退院後もしばらく家でのんびり過ごすことになった。  その日は少し調子が悪くて、私は朝からベッドに横たわっていた。熱もあったのだろうと思う。頭がすごくぼんやりして、考えても仕方ないことがぐるぐる頭を廻っていた。
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