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瞬く間に数年が過ぎ、私は大学に入学した。新しい生活、新しい友達。授業に、サークル。
しばらくして、一つ年上のサークルの先輩に告白された。嬉しいとか、嫌だとかよりも、とにかくびっくりして。あんまり急だから、少し返事を待ってください、先輩にはそう伝えた。
大和くんのお兄さんに対する思いは、恋愛感情というよりも、憧れの気持ちが強かった気がする。
先輩は、次期部長は確実だと言われているくらい人望があって、穏やかで、背が高くてハンサムな人だ。今は恋愛感情を持っていないけれど、こういう人とお付き合いするのが現実的なのかもしれない。
どうすればいいのかわからない。誰かに相談したい。信頼できる相談相手。私の頭に思い浮かんだのは、一人だけだった。
この数年で大和くんはぐんと背が伸びて、お兄さんと同じくらいになった。声も低くなって、もう出会った頃の小さな男の子じゃない。でも、にこにこ笑っている顔は、ずっと変わらない。
「大和くんは、進路、どうするの?」
「うん。俺、医者になろうと思って。医学部を目指す特進クラスに入った」
科学者を目指しているのだと思っていたから、正直、意外だった。
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