終点、そしてその先へ

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終点、そしてその先へ

祝辞より先に問い詰めた。 『なんで!?浮気するような男と!!』 電卓を叩いてて仕方ないにせよ、僕を見ないそらに沸々と怒りが湧く。 『…』 『結婚したって、この先上手くいくとは思えないね!』 『…』 黙々と数字を追う彼女の関心をひく為、派手な音を立て机を叩いた。 『っもう、計算の邪魔しないでよ』 やっと僕を見たそらの顔は、腹が立つ程平然としている。隣に立つ僕を椅子に座ったまま見上げ、 『どうしたの?彬に一番に報告しなかったから怒ってるの?』 『違うよ!』 『じゃあ、何?』 『…君が、そらが…心配なんだよ』 僕が君を幸せにしたかった。 仕事も家庭も、二人で一緒に満ち足りたものにしたかった。 喉の奥につかえた言葉と想いが、僕を苦しめた。 見つめ合ったままでいると、彼女は卓上の僕の手をとり、 『心配かけてゴメン』 そう言うと立ち上がって、静かに僕を抱きしめた。 知り合って以降、そらから触れてきたのは初めてだ。驚きを隠せない僕の胸元で、彼女は呟く。 『いつも有り難う、彬。これからも宜しくね』 電卓を連打してたせいで、ほんのり熱を帯びた指が僕の頬に置かれた。そして彼女が爪先立ちになり… この時、君が悪魔みたいなキスをするから、 僕に次を期待させたから、 君への劣情に火がついたまま放置したから、 僕は、あのアプリに登録したんだ。                (了)
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