起点

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起点

母の祖国である英国と日本を行き来する様になって、概ね世界各国空港付近の景色は同じと感じる。 空港という特性上、近くに高い建物がない。 目に入るのは、広めの敷地に立つ低層建造物。それも疎らで、あまり視界の邪魔にならない。 故に比較的低い位置の朝日が拝める。 1日の始まりを厳かに、或いは次の陸地を照らすため沈む太陽。母にとって父は太陽の様な存在。 僕にとって、そらはカタチを変える月の如く、会う度に惹きつけられる魅力的な女性。 僕は、日本人の父とイギリス人の母のもとに生まれた。 日本文化に傾倒する母が、日本の商社の現地スタッフとして働いていた時、父と出会った。二人は結婚後、姉と僕を授かり、家庭内では英語より日本語が多用された。 いずれ父の帰国に伴い、家族全員で日本に移住する未来に向けての、母の計らいだった。 おかげで父に似た顔立ちの僕は、来日後違和感なく溶け込めた。 ところが遺伝子が母寄りで碧眼の姉は、異質が際立つ日本社会で苦労した。なので姉は思春期の途中から、祖父の世話も兼ねてイギリスで暮らした。
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