01.緊急事態

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01.緊急事態

 ――仕事用の携帯電話が、けたたましく鳴り響いた。  時刻は深夜2時。この時点で緊急事態だということは分かる。 「ケイちゃん、鳴ってるよ」 「……だな」  隣で寝ていたセリナが、心配そうに俺を揺り起こす。  仕事柄そんなに驚くような事ではないのだが、何度経験しても嫌な音であることに変わりはない。  ベットから抜け出ると俺は携帯を手に取った。 「……はい、神崎」 『あ、神崎さん!? すみません夜中に! 緊急なんです!』 「だろうな。んで何事だ、落ち着いて話せ」 『は、はい! とにかく事件です! ひぐらし坂のタワマンに爆弾の模様! 現在処理班が対応中となりますッ!』 「模様って何だよ? てかもう処理班がいるなら俺は不要だろ」 『そ、そうなんですが! それがですね、形状的に見たことのない爆弾だそうで、というか、爆弾かどうかも不明みたいで、神崎さんに一度見て欲しいとのことでしたッ!』 「それを早く言えバカ。とりあえず住所送れ、じゃあな」  電話を切って携帯を机に置くと、俺は深く息を吐いた。  なんともまあ、きな臭い事件だ。  危険物処理班に所属している以上、きな臭くない方が珍しいと言えばそうなのだが。  程なくして今度は私物の携帯がLINEの通知音を鳴らす。安田のヤツ、焦って俺の携帯に住所を送りやがったらしい。守秘義務的に問題だっていうのに困ったものだ。  住所に目を遣る。ひぐらし坂と聞いて近いというのは分かっていたが、あのタワマンか。  うちの子の同級生も住んでいるらしい、よく知っている場所だった。
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