孔子愛憎本の感想

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孔子愛憎本の感想

読むのに半年かかったこの本の感想を書く時が来た。このページは、ちょっと長いよ。 この本のホントの名前は『孔子神話』という名前です。市民講座でおすすめされたので読んだ。孔子の人生と、彼が神格化されるプロセスが書いてある。 この本の著者は、好きな子にブース、とか、バーカとか言ってしまうタイプの人だということを先にお伝えしておく。そして孔子のことが好き。そうなるとどうなるかは、お察しください。 私が感じたことには、孔子っていうのは、弟子にとって、そして後世の儒者にとって、〈祈り〉のようなものらしい。 孔子は、(この本の作者の言を要約すると)、生涯ろくな職業に付けなかった社会不適合者でありながら、権力欲だけは異様に強い、「ねじれた魂」を持つ、嫉妬深いおじさん。 「ねじれた魂」とか、普通の研究書、書かないですよねたぶん。あとがきで「筆が乗って来ちゃって」とか書いてあったけど、ホント、ほかにも、ここには書ききれないくらい執拗に繰り返される、史料を用いたテクニカルな孔子叩きが、芸術の域に達してる感がある。 そういうわけで、この著者に言わせると、孔子教(≒儒教)は、このどうしようもないおじさんが教祖、というマイナススタートから始まっている。 まず孔子教が社会的地位を得ていくためには、このおじさんに聖性を与えなくてはいけない。 そのため、弟子と後世の儒者たちは、持てる知恵を絞り、嘘を緻密に重ね、孔子を、帝王よりも上に立つ、天意の受託者にして素王(無冠の王)としてプロデュースすることに数世紀を費やしていく。 孔子教が国教になるまでの時代は、「このダメなおじさん(孔子)が世間から偉大だと認められること=儒者全体が社会的に認められること」なんですね。そういう意味で儒者にとって、孔子は〈祈り〉。 孔子には偉大であって欲しい。でも事実は社会不適合者だった。この事実と理想の溝を埋めるための嘘を糊塗していく過程が、孔子教のすべてだ、という論理展開で進みます。 孔子は権力欲の塊だったのに、生前それを成就させることができなかった。社会不適合だったおじさんの、浮かばれない魂を救うために、後世のたくさんの儒者たちが、論理という名の嘘を重ねて、その嘘を徐々に世界に認めさせていく過程がアツい。 儒者たちは、孔子がちょっとアレだったという事実を覆うために、必然的に、自学の論を強靭に構築することに熱心にならざるを得なかった。組織を発展させるには、上に立つ人って、必ずしも聖人でなくてもよくて、その一例が孔子なのかもしれない。 そんな孔子を熱心にフォローする作業によって、思想的に鍛えられた結果もあってか、孔子教は漢代に入り国教になる。 時代をさらに下ると、儒者たちは、孔子が生前、喉から手が出るほど欲しがっていた、〈王〉の称号を獲得させることにも成功した。孔子は、死後数百年経ってようやく、権力欲を満たして本懐を遂げるんですね。人望すごいですよね。ダメな人ほど助けたくなる、って感じなんだろうか。 最終的に、明代に至り、帝として祭祀されそうなところまで来るんですけど、そこでまさかの、時の皇帝の相続問題のとばっちりを受け、孔子は王号を剝奪されてしまう。 そこから清末までは、王号を剝奪されたまま行くんですけど、康有為が、孔子を素王として認めさせる完璧な理論を構築した。これで孔子が復権するかに思えたけど、1900年代に入って時代の流れが変わりすぎて、孔子は王号を取り戻すことができなかったっぽい(ちょっと王号が取り戻せたのかはわからない)。 現代では、孔子はみんなの心の中に生きている。でも宗教独特の毒っ気がなくなった孔子教はつまらんなあ、みたいな作者の見解で終わった。一番毒っ気があるのは作者だと私は思った。 序盤、孔子を悪意たっぷりにディスりすぎて、この作者はメンタル的にどうかしているのではないかと思ったんですけども、中盤以降はディスりは減り、あとがきでは「この愛すべきおじさんをなぜもっと早く好きにならなかったのだろう」とか「孔子様」とか言ってる。スキの形って人それぞれですよね。 なお、「孔子」の項目のwikiに、この本載ってないです。おすすめしてくれた講師によれば、ディスりすぎていて問題作なので、参考文献としてはあまり名前が上がってこない本、って話らしいです。 ーーーーーーーーーーーーー コメありがとうございます 雑記帳3rd/p257/孔子本の感想楽しみ。 →書いてみたよ笑。もっとあの作者の魅力を伝えたかったけど、これ以上は、実際読んで堪能して欲しいね笑。 ーーーーーーーーーーーーー 雑記帳3rd/p257/地味な方法での監獄脱出…穴掘りとか? →わかんないんですけど、数学者と印刷工がタッグを組むらしいですよ! 暗号とかですかね?? ーーーーーーーーーーーーー 雑記帳3rd/p257/バッタが気になります。飛蝗の話ですか? →そうですね、アフリカの辺は、よくバッタの害があるらしくて。駆除しに行きがてら観察する(緑の全身スーツで)、みたいな感じで。 ーーーーーーーーーーーーー 雑記帳3rd/p256/謙虚…ですね…生きてることが有り難い でいきますわ →それいいですね、宝くじ当たるやつですよ!!! ーーーーーーーーーーーーー 雑記帳3rd/p257/オレンジのミステリが気になります(*^-^*) →票が割れたので、ぺコメの順に、オレンジ→バッタ→奈良監獄で行きたいと思います!
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