わたしのこと憶えてないよね？

　こんなことを言ったら、結婚を期待している両親や少子化対策を打ち出しているお偉いさん方に怒られそうだけど、結婚なんかしなくても一人で幸せに暮らせる方法はいくらでもあるのです。世の中が便利になればなるほど、未婚の人が増えていく気がする。

「昨日の話、乗ることにします」
　一晩熟考し、昼休憩のときに美智子さんに告げた。さすがに、一人焼肉とは比にならない勇気が必要ではあるが、美智子さんと一緒なら心強い。
　彼女はもともと乗り気だったので、わたしの生理が終わり次第、コンタクトを取ってくれるとのことだった。いよいよ現実味を帯びてきて、憂鬱な時期なのに浮かれていた。毎日のようにサイトを眺め、誰がいいか熟慮に熟慮を重ねた。ここはやっぱり一番人気の翼(かける)くんか。それとも、モロに好みっぽいエルくんか。悩ましい。若くてイケてそうな男の子を天秤にかけられるなんて、幸福の極地か。現実世界では経験できないことだ。
　恋人なし、結婚願望なしのアラサー女が風俗にどハマりしてしまったら、さすがにうちの親も泣くだろう。わたしだって泣くかもしれない。