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お恥ずかしながら、ガチのイケメンと接する機会が乏しい人生だったので、手が痺れるほどに緊張が高まった。薄く肉のない胸を突き破らんばかりに心臓が内側から叩いてくる。呼吸をするのもままならない。最後まで正気を保てるのか不安が募る。
「は、はじめまして。水崎いおりと申します。不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」
笑ってしまいそうなほど声が上ずった。男性経験の少なさや最近ご無沙汰なことまで一気に見透かされそうな、情けない挨拶に絶望する。
「不束者って。結婚の挨拶みたい。いおりちゃんって面白いなぁ」
いきなり名前で呼ばれてどきりとした。それに気づいたように「いおりちゃんって呼んでいいですか?」と訊かれた。呼び捨てほど馴れ馴れしくもなく、苗字呼びほど他人行儀でもない距離感に好感を持った。断る理由はない。
これがエルとの出会いだった。あえて新実さんとは言わないでおく。
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