わたしのこと憶えてないよね?

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「いおりんてさ、女性用風俗とか興味ある?」  仕事ができる憧れの先輩である美智子さんに突拍子もないことを訊かれたのは、先月末のことだった。年度末の忙しさに気でも触れたのかと、啜りかけたうどんを吐き出しそうになった。 「昼日中からなんですか、急に」 「いおりんも彼氏いないんでしょ。人肌恋しい夜ってない?」 「そりゃ、ありますけど……」  恥を忍んで言うのなら、ほぼ毎晩人肌恋しくはある。 「だよねぇ。でも、彼氏つくるのは面倒なんだよね。私はまだ結婚する気もないしさ。だからって、そこらへん歩いてる男とワンナイトも怖いでしょ。変な事件も多いし。その点、プロ相手なら安心だし、後腐れなくていいかなって。一度お試ししてみようかと思ってるんだけど、よかったらいおりんも一緒にどうよ。ネットで体験談読んだんだけど、すっっっごいみたいなのよ」  すごいのすの部分に渾身の力を込め、彼女は目を輝かせた。男性には不自由しそうにない特上の美人なのに、旺盛な性欲を隠さないところが好きだ。相手が気心の知れた後輩とはいえ、帰りに飲みに行かない~あの店美味しいよ~のノリで誘えるものではないだろうに、それをやってのける度胸には頭が下がる。
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