八重歯の笑顔に[読みきり]

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 ──夏休みが終わり高校に戻り、担任に学校事情を話して相談すると、OGとなった先生にボランティアで村の学校に教えてもらえることになった。  そして高三になったとき、OG先生から都会の大学に行くことを勧められる。 「子供たちに教えながら村の様子を知ったが、家の事情を考えると君はもっと世間を知った方が良い。御両親も納得しているから都会で世の中のしくみを学んできなさい」 そうして進められた大学に進み、林業経営のノウハウを学び帰省しようとしたが、今度は両親に企業に就職しろと勧められる。 「村には若い女がおらん。嫁を探してこい、一流建築会社に勤めて後継ぎをこさえてこい」 両親と村の面々の自分勝手な要求にうんざりしたが、絵梨花のことで村にいるのもつらかったので、苦しい思いをしながらも一流建築会社に就職した。 ※ ※ ※ ※ ※  ──研修を終えて、配属先の歓迎会をしてもらった夜、酔った先輩に詰め寄られてまだ女を知らないことがバレ、風俗店に連れて行かれる。 「い、いや、先輩、僕はそういうのはちょっと……」 「なに言ってんだ、現場は荒くれ者ばかりだぞ、度胸つけろ」  無理矢理引っ張られ、ソープランドに入り個室のベッドに座り先輩の指名したコを待つ。 ──ど、ドキドキする。は、はじめて……するんだ……── 「お待たせしましたー、エリリンといいます、よろしくぅ」  個室の扉が開いて、入ってきたコの顔を見る。先輩が選んだから顔をまだ見てない。頼む、好みの顔であってくれ。 「よ、よろしくお願いしま……す……」 「え……」 「絵梨花?!」 「英雄?!」  ケバい化粧に茶髪、ベービードールとかいうスケスケの上着のしたは、エロいパンティ……。大人な雰囲気をだしているが、間違いなく絵梨花だ。  しばらく互いに固まっていたが、絵梨花がバツが悪そうにしながらも隣に座る。 「ひさしぶりだね……」 「今までどうしてたんだ、親父さん達心配してるぞ」 「お願い、両親には言わないで」 「言えるわけないだろ、どうしてたんだよ」 「お願い何も訊かないで、サービスするから」  脱ごうとする絵梨花を押し止めて両肩を掴み、なにがあったかを訊こうと詰め寄る。 「ちょっと、痛い、やめて、離して、」  絵梨花の声を聞きつけたのか反社っぽい男が入ってくる。 「おいこら、嬢になにしてやがる」 凄みをきかせて入ってきた男の顔にも見覚えがあった。 「や、山名先生?!」 「あ?、誰だテメェ……」 さすがに驚いて硬直すると、その隙に絵梨花は部屋から逃げ出してしまった。 「待て、待ってくれ絵梨花」 追いかけようとしたが、他の従業員も来て大騒ぎとなり、山名先生も僕のことに気づいたのかいつの間にか消えてしまった。
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