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姉は俺が騙されているのではないかと心配した。
「少なくともオマエは一目惚れされるようなタイプではないだろ? しかも相手はオマエよりもずいぶん若くてキレイな子なんだろ。疑わしいよ」
調理器具や健康食品を売りつけられるか、怪しい国際結婚に巻き込まれるか、でなければ都内のワンルームマンションを購入させられるんじゃないかと姉は言った。
「一度会わせてもらってもいいかな? 今度会うのもドッグラン?」
「いやいや、さすがに保護者連れて行くような歳でもないからね。ねーちゃんがデートについてきたら変だよ」
「だったらウチにつれてくればいーじゃん」
「つきあい始めたばかりで自宅に招くのは引かれませんかね?」
「何歳の子?」
「18だって。高校卒業してこの春2個隣の〇〇町の町役場に就職したばかり」
つまり最初に出会った日はまだ高校3年生だったということになる。服装や言葉遣いや雰囲気などからもう少し年上だと思っていた。
「18? オマエと9つも違うんかい。若過ぎ。ハンザイじゃん」
「いや、ハンザイではないからね。こっちとしてはキツネにつままれたような気分ではあるが、ミカはいい子だよ。なんで俺のこと好きなのかがよくわからないけど」
わからないが、ミカが俺を好きでいてくれるのは間違いないと思う。とにかく顔を合わせたときのスキスキ光線が半端ない。
この前手をつないだらめちゃくちゃドギマギされた。ドギマギは伝染する。しかも非モテの俺はこの年になっても女子に対して免疫がない。学生みたいに2人で照れながら手をつないで歩いた。
ミカは背は高いけど俺より手は小さくて、その手はすっぽりと俺の手の中に収まった。
「その子、ミカちゃんっていうの? フルネーム聞いていい?」
「イトウミカ」
「イトウミカちゃん?」
姉はその名前を聞いた途端、少し変な顔をした。
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