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久しぶりにミカの家にお邪魔した。
ケントは相変わらず大きくて白に近い薄茶色の毛並みで、以前よりもゆったりと歩いてきて、寄り添うように俺の隣に腰を下ろした。
ケントの背中に手を伸ばし、ポンポンと撫でる。ケントは俺に寄り添ってきた。俺はケントをそのままぎゅっと抱き寄せた。犬の熱い体温がして、ラブを思い起こさせる獣の匂いが懐かしく鼻孔をくすぐった。
この熱い暖かい生き物を、俺は最後にそばにいて看取ることができずに失った。その事実が突然リアルに迫ってきて、鼻の奥がツンとなった。
気がつけば、俺はケントの首っ玉にかじりついたまま、みっともなくオイオイと泣いていた。ケントはずっと俺のそばにいて、辛抱強く寄り添ってくれていた。
ミカの言葉が頭をよぎった。
──ケントはわかってると思う。
獣の慰めの感情をすぐ近くで俺は感じた。
ミカがやってきて、ケントごと俺を抱きしめた。ミカも目に涙を浮かべていた。
俺たちはそのあと言葉を交わすこともなく、ただ泣き続けた。
ミカは本当にラブのことを大好きでいてくれた。ケントもラブのことを慕ってくれていた。
同じ相手のことを好きな者たちで寄り添っていられることは、そのときの俺にとって大きな慰めだった。
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