sideB

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 そこへ通りがかったのがケンちゃんだった。  車を停めて降りてきて、どうしたの?って聞いてくれた。  当時ケンちゃんは大学生ぐらいのお兄さんだった。その見知らぬお兄さんに、私は一生懸命に事情を説明した。  そうしたら彼は、まず動物病院だよな、と言って、モミジを乗せて運んでくれると言ってくれた。  それから彼は、怪我をしているモミジを服が汚れるのにも構わず車の中に運び込んで、〇〇動物病院まで連れて行くから、と私に言った。  多分車も汚れた。でも彼はそんなことは全然お構いなしで、すぐに先生に診てもらえるから頑張れよ、なんてモミジに声を掛けていた。  私もモミジにつき添って車に乗るといったら、君は一旦おうちに帰っておうちの人に知らせてきて、と言われた。  泣きながら私は帰宅し、彼に教えてもらった病院に、ママに連れられて駆けつけた。  モミジは骨折していて外傷もあったけれども、幸い内臓は無事で、治療とリハビリで元に戻ると言われた。  ニッと笑って「よかったな」って声をかけてくれたケンちゃんの顔を、私は一生忘れない。  そのときからずっと、いまでも変わらず大好きな人。
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