2人が本棚に入れています
本棚に追加
「っていうか、ここはやばい」
走っているのは、遮るものがなにもない渡り廊下の中腹。自分以外の人影はなく、走り抜けるにもあと数秒はかかる。
振り返ると案の定、ナイフを振りかぶる凛の姿があった。小手先で避けようとしても、彼女はリリースの寸前まで修正を利かせることができる。
何を隠そう、その芸当を身をもって味わい、本来ならありえない部分から昼食が流れ出た経験がある。
反射的に飛び出しそうになる身体をぎりぎりまで制し、凛の投擲の瞬間に大きく飛び退く。
ナイフは小気味のいい音とともに、僕の足元に突き刺さった。汗がぽたりと滴ったのは、全力疾走のせいだけではないだろう。
「何度も言うけど、刺されば痛いんだぞ!」
「貴様がちょこまかと逃げるまわるからだ。足に風穴の一つも空けたくなる」
必死の抗議も、凛は涼風のごとく受け流した。
最初のコメントを投稿しよう!