1.最悪の誕生日

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「あのっ、秋人くん、ちょっといい?」  私はバスケを終えてボールを片付けている秋人くんを呼び出した。 「何?」    にこやかに返事をする秋人くん。  わわっ、秋人くん、爽やかな笑顔。  光る汗がかっこいい――じゃなくて!    私はすぅと息を吸い込んだ。    ずっと前から決めてたんだ。  十二歳になったら、十一歳の私とは違う私になる。    勇気をだして秋人くんに告白するって!    私は拳をぎゅっと握り、秋人くんを見つめてさけんだ。 「あの、秋人くん……好きです。付き合って下さい!」  い、言っちゃった~!!  だけど秋人くんは、一瞬キョトンとした後、すまなそうに視線を落とした。 「ごめんね、茉白ちゃんとは付き合えない」  ガーン!! 「ど、どうして? 他に好きな子がいるの?」    私が勇気をだして聞くと、秋人くんは少し照れくさそうな顔をしてうなずいた。 「うん、いるよ」    心臓がドクンと鳴る。  秋人くん、好きな人いるんだ。 「それ、誰? 私の知ってる人?」    恐る恐る尋ねてみる。  秋人くんは恥ずかしそうに笑った。 「となりのクラスの北根(きたね)クインちゃん。知ってる?」 「う、うん……」    知ってるも何も、クインちゃんは私のともだち。  今年、クラス替えで違うクラスになるまではずっと一緒だったんだ。    長くてフワフワの茶色い髪。  陶器みたいにツルツルの白いお肌。  お人形さんみたいに大きな目の女の子。  それだけじゃなくて、スポーツ万能で勉強もできて、まさに完璧女子。    学校でもすごく目立つ存在なの。
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