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1.最悪の誕生日
放課後の教室。
私が帰る準備をしていると、親友のモカちゃんが窓の外を指さして言った。
「ねぇ茉白、見て見て! 秋人くんがバスケしてるよ」
「えっ、どこどこ?」
私が慌てて外を見ると、グラウンドのすみのコートで、クラスの男子たちがバスケをしていた。
秋人くん、いた。
トクンと胸が鳴る。
たくさんの男子たちの中でも、私の目はすぐ秋人くんを見つけてしまう。
サラサラの黒髪に色白の肌、大人っぽい切れ長の目。
ああ、秋人くん、やっぱりかっこいいな。
私がぽーっとしていると、タイミングよく秋人くんにボールが渡る。
「秋人!」
「うん」
ボールを受け取った秋人くんは、慌てることも無く軽々とスリーポイントシュートを決めてしまった。
「やりぃ」
「秋人すげー!」
男子たちとハイタッチをする秋人くん。
その優しい笑顔に、胸がキュンキュンとしめつけられる。
「ねぇねぇ見た今の。カッコイイ!」
「すごいねー、秋人くん」
ひとしきり二人で盛り上がった後、モカちゃんは真剣な顔で私の背中を叩いた。
「あっ、バスケ終わったみたいだよ。そろそろどう?」
私はゴクリとツバを飲みこむと、うなずいた。
「うん、私、行ってくる」
私――水森茉白は今日が十二歳の誕生日。
一つ大人の階段を登ったということで、決心したことがあるの。
それは――。
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