第6話 誰かからのメッセージ

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 私は気持ちを切り替えて、『ペンタブ』さんに訊いた。 「じゃあ、次は何の写真がいいですか?」 「『肉球ぷにぷに』さんの写真がいいです。勿論顔は写っていなくて構わないんです。手とか、後ろ姿だけで十分なので……駄目でしょうか?」  そう訊かれて、私は少し考えた。  一応私のことを好きだと言ってくれている以上、私がどんな容姿をしているのか気になるのは自然だろうし、見せても差し支えないところなら別に構わないだろう。 「いいですよ」 「ありがとうございます。楽しみにしてますね。それでは、僕はこれで」 「はい、失礼します」  私は電話を切った。  今度、『なぎゅん』にでも後ろ姿の写真を撮ってもらおう。  顔は見えなくても、やっぱり少しくらいオシャレした方が、『ペンタブ』さんも嬉しいだろうか。  私はスマートフォンをテーブルに置いて立ち上がると、服を選ぶためにクローゼットを開けた。  クローゼットの前で立ち尽くしたまま、ああでもない、こうでもないと悩んでいると、私の足元にやって来たにゃん三郎が「何してるの?」という顔で私を見上げてくる。 「にゃん三郎も手伝ってくれる?」  にゃん三郎が小さく首を傾げて「にゃー」と鳴くと、私は言った。 「好きな服があったら教えてね」  私は次々に服を体に当てて、にゃん三郎に見せ始めた。  にゃん三郎が決めてくれたらラッキーくらいのつもりだったけど、にゃん三郎は黒地に花柄をあしらったワンピースの私を見て、また「にゃー」と鳴く。  自分ではなかなか決められないし、にゃん三郎の意見に従うことにしよう。 「ありがとね」  私はワンピースをクローゼットに戻して、にゃん三郎の頭を軽く撫でると、『なぎゅん』に連絡を取るためにスマートフォンを手に取った。  今まで浮いた話の一つもなかった私が、「男の人に見せるための写真を撮って」なんて言ったら、『なぎゅん』はきっとびっくりするだろう。  自分でもびっくりだ。  いつになるかわからないけど、できれば『ペンタブ』さんにいい返事ができたらいいと思う。  私はロックを解除して、ソファに腰を下ろすと、『なぎゅん』に送るメッセージを書き始めた。 参考文献・サイト 13.色覚の異常-目と健康シリーズ 13.色覚の異常|目と健康シリーズ|三和化学研究所 (skk-net.com) (二〇二〇年九月二十七日参照)
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