第6話 誰かからのメッセージ

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 私は玄関脇にトートバッグを置いて、うがい手洗いを済ませると、冷蔵庫からルイボスティーの入ったピッチャーを取り出してグラスに注いだ。  よく冷えたルイボスティーを一口飲み下した途端、思った以上に喉が渇いていたことに気が付いて、一気に飲み干す。  にゃん三郎も喉が渇いていたみたいで、給水機から水を飲んでいた。  グラスを片付けた私は、水を飲むにゃん三郎の顔を改めて覗き込んでみたけど、顔がむくんでいたり、よだれを垂らしたりしている訳でもないし、特に副作用の心配はなさそうだ。  でもにゃん三郎は言葉が喋れないから、この数日は私がよくよく気を付けてあげないといけない。    私は給水機から顔を上げたにゃん三郎の頭を撫でると、玄関に置きっ放しのトートバッグとキャットキャリーをクローゼットに片付けた。  午前中に食料品の買い出しも済ませていたし、今日はもう何の予定もない。  すっかり暇になった私は、トートバッグの中から引っ張り出したスマートフォンのロックを解除した。  例のアプリを開いてログインしてみると、また誰かがレビューを付けてくれたことを知る。   ユーザー名は『テプバン』さん。  タイトルは「この暗号を解いて下さい。一週間後の十五時を予約します」。  全然レビューらしくない内容だから、イタズラかとも思ったけど、確かに予約が入っているし、多分ちゃんとした依頼なのだろう。  私は、本文に書かれた暗号を見てみた。  そこには「ダック威圧的さ」という訳のわからない言葉が書かれているだけで、ヒントも何もない。  ヒントがなくても解けるくらい、簡単な暗号ということなのだろうか。  だとしたら、きっと『ペンタブ』さんはあっさり解いてしまうに違いない。  私は写真をきりっとしたにゃん三郎から、日向ぼっこをするいつものにゃん三郎に差し替えると、ステータスを「電話待ち」にした。
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