第6話 誰かからのメッセージ

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 『ペンタブ』さんと連絡が取れないまま、数日が経った。  私は今日も自分とにゃん三郎の暮らしを守るために出勤し、残業までしっかりこなして、家に辿り着いたのは二十一時過ぎだ。  簡単にお夕飯を済ませてお風呂から上がった私は、ドライヤーで髪を乾かしながらスマートフォンを操作して、例のアプリを開いた。  ドライヤーの音を嫌がって、玄関の方に逃げて行くにゃん三郎を見送りながら、アプリにログインしてみたけど、特に申し込みは入っていなくて、ちょっとがっかりする。  『ペンタブ』さんが申し込みをしてくれることを、ほんの少しだけ期待していたのだけど。  これはやはり、『ペンタブ』さんは何か深刻なトラブルに巻き込まれているのかも知れなかった。  理由はどうあれ、『ペンタブ』さんが私の合図に動きを見せないということは、きっと例の暗号すら見ていない訳で、このままだとあの暗号は解けないままだ。  お客さんに「わかりませんでした」と言って謝れば事は済むけど、仮にも仕事である以上、できるだけのことはするべきだろう。  『ペンタブ』さんが当てにできないなら、自分で解いてみるしかなかった。  正直自信はないけど、もう二十三時近いし、友達に電話するには遅い。  まずは一人で解いてみて、解けなかったら友達にメッセージを送って訊いてみよう。  私はそう決めると、改めて「ダック威圧的さ」という文章を見てみた。  とりあえず、何かヒントになるようなものがヒットしないだろうかと、インターネットで検索をかけてみたけど、「威圧的」という言葉があるページがいくつもヒットしただけで、特に解読の役には立ちそうになかった。  このやり方は駄目みたいだ。  それなら、「暗号の解き方」について調べてみるのはどうだろう。  『ペンタブ』さんも「暗号の解き方」について勉強したと言っていたし、何か手掛かりが掴めるかも知れない。  私が早速「暗号の解き方」で検索してみると、いろいろな解き方がヒットした。  いくつかのページに目を通してみたけど、やっぱり暗号によって解き方はバラバラで、どの暗号でも通用するような解き方はないらしい。  これまで『ペンタブ』さんが解いてきた暗号の解き方も毎回違っていたし、まあ納得だ。  この暗号にぴったりの解き方は何だろう。  どう見ても、このままではきちんとした文章にはなりそうにない。  よくある解き方として「文章の書き方を変えてみる」という方法があるみたいだから、まず表記を変えてみるのが良さそうだった。  
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