第6話 誰かからのメッセージ

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 結局『ペンタブ』さんとは連絡が取れないまま、土曜日がやってきた。  窓から差し込む日差しは熱いくらいで、洗濯物がよく乾きそうないい天気なのに、その日差しの強さが今の私には少し鬱陶しい。  何も知らないにゃん三郎は私に遊んで欲しそうだったけど、ボールで遊んでもらうことにして、私は『愚痴聞き屋』の仕事をすることにした。  もうすぐ予約時間の十五時だ。  イタズラかも知れないと思うと、電話するのは気が進まなかったけど、無視する訳にも行かない。  私はいつものようにペンとメモ帳を用意してから、十五時丁度に発信ボタンをタップした。  少し緊張しながらコール音を数えていると、二つ目のコールが終わったところで、お客さんが電話に出る。 「もしもし?」  電話の向こうから聞こえた声は、予想に反して知っているそれで、私は咄嗟に言葉が出て来なかった。  声の主は、『ペンタブ』さんだったのだ。  でもその声は、何だか変だった。  口の中に何か入れているみたいだ。  この時間なら、おやつでも食べているのかも知れない。  無事だったのは良かったけど、ちょっと心配していた私は『ペンタブ』さんの呑気さに腹が立って、つい口調がきつくなった。 「『ペンタブ』さん! 今まで何してたんですか!? 合図出してたのに、無視しないで下さいよ! って言うか、『ペンタブ』さんだったんなら、どうしてわざわざあんな暗号なんて書き込んだりしたんですか!?」  私が名乗りもせずにそうまくし立てると、『ペンタブ』さんは口の中のものを飲み込んだみたいで、いつも通りの声で言った。 「すみません。ちょっといろいろ思うところが……」  歯切れ悪く言う『ペンタブ』さんの言葉を遮って、私は言う。 「ちゃんと説明して下さい」 「ちゃんと説明し辛いからこそ、こういう手を使ったんですけど……」  『ペンタブ』さんは、もごもごした声でそう言った。  わかり難いけど、『ペンタブ』さんの声には迷いとも困惑とも付かないものが混じっていて、余程言いたくないらしい。  でも「言いたくないなら、無理に聞かなくてもいいや」なんて思える程、今の私は優しくなかった。  私はいつもより平坦な声で、『ペンタブ』さんに尋ねる。 「さっきから、何食べてるんですか?」 「ポップコーンです。でも只のポップコーンではないんですよ。チョコミント味なんです」 「へー、珍しいですね」 「でしょう? 新作なんです。僕はチョコが好きなのですが、中でもチョコミントに目がなくて」  どうやら『ペンタブ』さんは、甘い物好きらしい。
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