第6話 誰かからのメッセージ

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 『ペンタブ』さんが挙げた理由は、どれも私にとっては大したことがないものだったけど、自分に価値があると認めてもらえたみたいで、ほんの少しだけ嬉しくなる。  でも正直なところ、戸惑いの方が大きかった。  『ペンタブ』さんは私を好きだと言ってくれたけど、私は『ペンタブ』さんのことをどう思っているのか、よくわからない。  『ペンタブ』さんは多分いい人だし、好きか嫌いかの二択で言えば、好きだとは思う。  でもそれはあくまで「人として」好きという話だし、ここで「私も『ペンタブ』さんのことが好きです」なんて答えられる程、私は『ペンタブ』さんのことを知らなかった。  もっと『ペンタブ』さんのことを知りたい気もするけど、一体どう返事をすればいいのだろう。  私が言葉に迷って何も言えずにいると、『ペンタブ』さんはそんな私を見透かしたように言った。 「返事は今すぐでなくても構いませんよ。でも、とりあえず友達になって頂けませんか? 只の知り合いより、ほんの少しだけ格を上げて頂けると、僕としては有難いのですが」  私はほっとした。  告白してきた相手と友達になるというのは、振っているのと変わりない気もするけど、とりあえず角も立たないし、この場ではベストな落ち着きどころだ。  でも、本当はきちんと返事をするのが誠意で、優しさなのだろう。  そうわかってはいるけど、今まで告白されたことなんてなかったから、とてもすぐにはきちんとした返事なんてできなかった。  多分『ペンタブ』さんなりに、私を困らせないように気を遣ってくれたのだろうし、ここは甘えてしまおう。  私は多少の罪悪感を覚えつつも、『ペンタブ』さんに言った。 「わかりました。友達になりましょう」  こうして私達は只の知り合いから、友達になった。
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